2020年06月03日 聞法
忘れること勿(なか)れと鐘を撞く
思いもよらぬことがまた、起こっています。治療法が確立していない新型のウイルスが世界全体を覆い、私たちの日常生活がいかに脆いものであるか、何でもない1日がいかに尊いものであるかを嫌が応にも感じずにはいられません。
マスクやトイレットペーパーのない棚に「オイルショックを思い出す」方もあるでしょう。目に見えないウイルスを恐れて外出を控える心持ちは、まさに九年前の放射能を恐れてどうしていいか分からなくなったあの時の気持ちとよく似ていて、心細く気弱な自分が顔を出します。
そんななか、迎えた3月11日。真宗大谷派有志寺院では毎年『勿忘(わすれな)の鐘』と名付けた東日本大震災追悼法要を勤修しています。
あちこちで行事の見合わせが相次ぐ中、参詣者のご門徒さんを思うと迷う気持ちもありましたが、そもそも毎年少人数で行われていた法要でもあり、やはりこんな時だからこそ、むきだしの命に対峙せざるを得なかったあの日に手を合わせようと法要をお勤めさせていただきました。
結果として、学校がお休みで普段この法要には参加できなかった娘たちも揃って手を合わせることになりました。当時小学3年生だった長女はこの春高校を卒業し、9年という月日があの時の記憶を遠くへ押しやるのを感じます。忘れてはいけないのについ忘れてしまう私たちですが「かけがえのない命を今、生きている」ということにもう一度向き合う機会をいただいたように感じました。
●住職法話より
今年は法話の前にNHKの震災復興ソングとして作られた『花は咲く』の映像を見ていただきました。この歌は仙台市出身の岩井俊二さんが作詞を手掛け、同じく仙台市出身の菅野よう子さんが作曲しました。岩井さんが「亡くなった方たちの思いを歌詞にしてほしい」と頼まれ出来上がったこの歌は『私は何を残しただろう』と繰り返します。
数年後作曲者の菅野さんは岩井さんの了承を得て歌詞の一部を『私は何を残すだろう』に書き換えました。これは亡くなった方たちの思いを生きている私たちが受け取ったことを意味していると思われます。
そしてもう一曲。昨年大ヒットしたNHK2020年応援ソング『パプリカ』。一見何の繋がりもないように感じますが作詞作曲者の米津玄師さんが手がけた「みんなのうた」のミュージックビデオには、海辺の町で大人には見えない子と生きている子どもたちが手に花を持ち『花が咲いたら種をまこう』と歌うのです。
パプリカの花言葉は「あなたを忘れない」だそうです。亡くなった人たちを忘れないでその思いを受け継ぎ、花を咲かそう。そして花を咲かせたら未来へ種をまこう。私たちはそうして思いを引き継いで生きていくのを願われているのでしょう。
勿忘の鐘 撞鐘
正信偈 同朋奉讃式 勤行
『花は咲く』の映像とともに
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