法話・今月の言葉


生活の中の仏教

2020年05月

コロナ禍の中で

今、私たちは新型コロナウィルス感染症という大きな問題に直面しています。テレビや新聞で取り上げられない日はなく、志村けんさんや岡江久美子さんのようにテレビで親しみのある方が今回の病気で亡くなられていくということが、あまりに現実離れしていて事実を受け止めきれない思いでいます。

東日本大震災の時には、どの人もみんな起きていることに対する不安やしんどさと共に、どこに向けていいかわからない怒りを大なり小なり抱えているのを感じました。それは、ふと頭をどこかにぶつけたりした時に瞬間的に怒りが沸き起こったりするようなもので、表面には怒りとして現れるけれど実は痛みが内にあるということなのでしょう。

再び災害の様なことが今起きていて、時にはどこかに怒りをぶつけてしまうこともあるけれど、どんな人も痛みや悲しみを抱えざるを得ないような状況にあるのだと思います。

「草が申すには
私にがんばりなどはなく
微風に強風に
ただ柔軟に
そよぎゆれうごくだけ」

この春にたまたま訪れた町の、お寺の掲示板にかけてあった言葉です。草は微風や強風にあった時、頑張ってあらがうのではなく柔軟にそよぎ揺れ動くだけだと、この言葉は伝えています。そして、その姿からはどんな出来事に対してもしっかりと根を張って本質を見失わない強さを感じます。

内には、自分がどんな自分でありたいのか、何を願いとしていくのか、その根本のところを失わないことが大事なのではないでしょうか。そして外に対しては、自分の考えに固執するのでなく、柔軟に人や物事と関わってく努力が大切なのだと教えられます。

どうしようもできない怒りや苛立ちの続く日々ではありますが、痛みや悲しみを抱える同じ生身の人としてお互いに関わっていければと思います。

(住職 2020年4月)

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