法話・今月の言葉


生活の中の仏教

2022年08月

福島県浪江町周辺を訪ねる

真宗大谷派仙台教区(岩手・宮城・福島)の社会部が主催した1泊2日の研修会に坊守が参加してきました。そこで見聞きし、感じたことをご報告させていただきます。

真宗大谷派仙台教区社会部主催「現代社会の諸問題に関する学習会」「福島県浪江町周辺を訪ねる」に参加しました。

(4月27日 研修1日目)
福島県福島第一原子力発電所近辺の浪江町、双葉町大熊町には真宗大谷派の寺院がそれぞれ一軒ずつありました。まず訪れたのは、浪江町正西寺。除染を繰り返し、やっと住めるようになったのは最近のこと。内部も地震と放射能汚染からの修復を得てよみがえっていました。伊達政宗公も宿泊されたことのある由緒あるお寺で、珍しい木彫りの親鸞聖人・蓮如上人の絵像があります。

ここでは町内で稲作を再開されている総代さんに震災当初からのお話しを聞くことができました。「やっぱり農業が好きなんだ。私は稲の言ってることがわかるんですよ」と話された笑顔が印象的でした。ご苦労もたくさんされて来られたことと思いますが、その笑顔に命が輝く瞬間を見せていただいたような気がします。

その後訪れたのは請戸小学校。福島第一原発から直線距離で8キロほど、海岸からもすぐの小学校です。地震直後11キロ離れた小さな山まで児童職員全員歩いて避難したそう。生々しい津波被害の状態がそのまま残され、黒板には自衛隊員はじめ、ここを訪れることができた方々のメッセージが残されていました。

(4月28日 研修2日目)
双葉町「正福寺」と富岡町「西願寺」。この二ケ寺は取り壊しを余儀なくされていました。正福寺さんのあった辺りは双葉町の再開発の中心地になるそうで、既に須賀川市に仮御堂を再建され、そちらに本拠地を移されたそうです。西願寺さんは2年後に、元の場所に再建することを目指して除染及び整備を進めていらっしゃいました。富岡町はまだ帰宅困難域もあり、放射線量も場所によっては高いところがあります。なかなか厳しい現実です。

その後訪れた「東北電力廃炉資料館」では今回の事故の経緯から現状、今後の廃炉に至るまでの見通しなどが丁寧に科学的に説明されていました。今まで断片的に情報を収集していた原子力発電のことや事故のことが、私としてはわかりやすく理解できて頭のなかでパズルの答え合わせがされているようでした。まだまだ廃炉には時間がかかり、溶けてしまった放射性物質デブリの取りだしには何世代もかかるそうです。そこで働く方々にも頭の下がる思いがしました。

東日本大震災から11年を過ぎ、仙台市近辺では復興が進んでいますが、福島第一原発周辺は長い間立ち入ることさえできなかった場所です。まだまだあの時のまま時が止まったような場所があちこち見受けられ心が痛みました。

それでも2階の窓から第1原発の煙突が見える場所に、たったの11年で訪れることができるようになるとは。震災直後正西寺の坊守さんが「生きているうちに帰れるとは思えない。」とおっしゃっていた言葉を思い出し、ここまで来るのにどれだけの方々のどれだけの尽力があったのだろうと思わされました。

「たとえ故郷に住むことができなくても、お墓とお寺があることでそこに帰ってこられる。」そういうご門徒さんの思いに支えられて今がある、とおっしゃっていたご住職の言葉を噛みしめ、帰宅の徒につきました。

(現代社会の諸問題に関する学習会 坊守報告 2022年4月27・28日)

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