2020年11月
先日、GO TOキャンペーンにあやかって、秋田・青森と旅行してきました。その道中「不老不死温泉」に寄ったのですが、大変不便な場所にあるにも関わらず、ずいぶん大勢の人で賑わっていました。思うにこの「不老不死」、老いず死なず、ということに魅力を感じ訪れる人が多いのでしょう。しかし、です。老いない、死なないということがあるでしょうか。
このことで思い出したのが『正信偈』の「三蔵流支授浄教 焚焼仙経帰楽邦」という部分です。これは曇鸞大師のエピソードなのですが、大集経というお経を訳そうとした大師が途中で病気になり、どんなに志があっても体がだめになったら元も子もない、と長生不死を教義とする道教を学ぶことにします。免許皆伝を得て喜び勇んで自慢したところ「仮に長生の命を得ても煩悩の命をただ廻るだけではないですか。本当に生きることと違うことで時間が過ぎるだけではないですか。」と言われ、ハッとします。そして仙経を焼き捨て、観無量寿経=「永遠の命を観る経」を得るのです。
さて、永遠の命、とは何でしょう。ただ、時間が過ぎても生きることにならない、長生不死を求めるのは自分ではない外側に何かを求めていくに過ぎません。仏教は内道。生きるという中身がどうであったか、本当に私は生きたという実感があるのか、生きる命とは何だろう、観無量寿経は問い続けていきます。
どんな命も、命そのものは休むことなく生きています。そして生きたいと願っています。ただ、その命が生きにくい状況を周りが作ってしまっているということがあるのではないでしょうか。
(同朋会 前住職法話より 2020年10月10日)
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